おりじゅのブログ

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フリードリヒ・シラー『群盗』を読んで

2週間ほど前のゲーテに引き続き、ドイツ文学の作品を読んでみました。

今回読んだ本は『群盗』(岩波書店)という作品。現在ほとんどの書店でお目にかかることの出来ない書籍ですが、来月には岩波文庫より再版されるようですね。

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群盗 (岩波文庫)

群盗 (岩波文庫)

 

今回僕は図書館でこの本(上の写真の本)を何とか入手することが出来ました。この本自体は出版からもう50年近くの月日が経っているようですね。本の周辺も黒くなり、古本独特のにおいを発していました。

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ついでに言えば、この本が置かれていた図書館はもう今は統合されて廃止されてしまいましたね。

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あらすじ

この作品はとある貴族の一家を主要人物としており、貴族から落ちぶれ悪事を働いているばかりいた兄と領主である父の跡を狙う弟を中心に話が進んでいきます。描かれるシーンは弟を中心とするパートと兄を中心とするパートに分かれ、話が進むにつれ両者の世界観の距離感が近づいてくるのが分かります。

 

作品は冒頭である第一幕から弟の性格の悪さ(というよりかは本性)がにじみ出てきています。いかに自らの手を汚さずに領主の父を死に至らしめ、そして兄を欺いて自分が領主となるのか、そのことしか考えていないように思えました。また、その後も兄を愛していた女性を自分の妻にしようとするなど、現代の自分から見てもあまり好ましく写らない性格をしていました。(権力を得ようとする人間は所詮こんな人間なのだ、という作者からのメッセージでしょうか?)

 

兄のシーンは悪事を働いていたメンバーと徒党を組んだところから始まります。最初兄は弟が父のふりをして書いた手紙を見て、自分は勘当されたと絶望しますが、後に弟の謀略に気がつきます。そして、しばらく戻っていなかった自分の家族の領地へと戻り、弟が領主となった自分の故郷を見ることとなるのです。(良い意味でも、悪い意味ででも、兄の性格は弟よりも情熱的でした。)

 

この作品を面白くしているもの
  • 扇動的な演説をする兄と弟:両者は共に他者を説得する力に長けているように描かれていました。どちらの話も的確で効果的な比喩が多用され、読み手さえ感心させるような話をしていました。ちなみに、「扇動的」と書いたのは、その説得がしばしば悪事を働くときに用いられていたからです笑
  • キリスト教のモチーフ:この作品の後半部分にはぎっしりとキリスト教的要素がつまっています。イエス・キリストを褒め称えるシーンしかり、神父さんが教えを説くシーンしかり、キリスト教を連想する場面が垣間見られました。特にある場面は最後の審判を元にこれを書いているな、というシーンも・・・
  • 史実に基づくエピソード:古代ローマ時代に関する逸話がちょくちょく挿まれているのもこの本の特徴でした。兄や弟が話をしている場面できっとこの時代の話がされているはずですので、実際に読まれる際は古代ローマの話を探されてみてはいかがでしょうか?

 

この作品をちょっぴり残念にしているもの
  • 脇役の人物作りが甘い:兄が隊長を務めていた盗賊団も結構な割合で作品に出てくるのですが、その割に団の主要メンバーのキャラに個性を感じることが出来ませんでした。兄や弟の一家の周囲のメンバーの描写についても同じことが言えるかと思います。
  • 文章がやや読みづらい:自分の識字力が低いからでしょうか、あまり目にしない漢字を良く目にした気がします。震えるという字を「顫える」と書かれるとは思いもしませんでした。

 

さいごに

良いところも悪いところもありましたが、文学作品の中では非常にエネルギッシュなものを感じる作品でした。また一つ新鮮味のある作品に出会えた気がします。

 

それでは。

 

翌日の投稿:

 

昨日の投稿:

hanoian.hatenablog.com