おりじゅのブログ ~九州大学法学部の学生によるブログ~

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湯浅誠 『反貧困』を読んで

今日読んだ本は『反貧困』(岩波新書)という本。

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反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

 

本の構成をざっくり言ってしまうと、 前半部分は現時点(2008年頃)でなぜ貧困が問題なのかが解説され、後半に貧困問題に対するケーススタディや筆者の団体の活動などが書かれています。大まかに貧困問題をつかみたい人であれば、前半の第1部と終章を読めば十分かと思います。(予備知識として堤未果 著の『貧困大国アメリカ』を読んでおくと良いかも知れません。僕は大学受験期に読んでいたので、本の中にこの本の内容が入ってきてもすんなり読めました。)

 

この本では前半部分が大事な点だと思ったので、主に第1部から要点を抜き出してみました。要点は種類に応じて空白を空けています。

  • 非正規労働者は望んで非正規労働者になったわけではない。非正規雇用の人に、「そのような職場で働くのはあなたの自己責任だ」と言うのは不適切だ。
  • 1995年の経団連の「新時代の「日本的経営」」に起因して、企業は90年代の長期の不況から脱するために非正規雇用化を進めてきた。
  • 働くことが必ずしも、生活を成り立たせるセーフティネットとして機能しなくなってしまった。例えば、非正規雇用の人間には失業給付も、そしてほとんどの場合、雇用保険もない。

 

  • 公助の代表的なものに生活保護がある。一定の収入の資産を下回ると、生活費や医療費などが世帯単位で給付される制度だ。なお、生活保護が必要のない人に給付されることを「濫給」、必要な人に給付されないことを「漏給」という。
  • 生活保護の受給がよく問題になる。しかし、1万件の濫給と600万人の漏給、どちらが生活保護において問題なのかは明らかではないか?

 

  • 社会のセーフティネット貧困層に機能していないとどうなるのか。刑務所がもう一つのセーフティネットにならざるを得なくなる可能性が浮上する。そうなると、一部の塀の外で食っていけない人々は、生活のために犯罪をして刑務所に入るようになるのではないか。
  • 65歳以上の受刑者の再入所率が高いのは、食っていけないことが大きな要因なのでは?再犯防止のためには司法を越えた取り組みが必要なのではないか。

 

  • 5重の排除:教育課程からの排除、企業福祉からの排除、家族福祉からの排除、公的福祉からの排除、そして四つの排除があった末に自分自身の排除がある。
  • 自己責任論の典型:○○には別の選択肢があった。しかし○○は選ばなかった。○○は自己管理ができていなかった。従って○○の失敗は自己責任であり、社会を非難するのはお門違いである。しかし、貧困にあえぐ人々の場合、別の選択肢があるといえるのか?
  • ‘溜め’というクッションのようなものが貧困を問題として抱える人にはほとんどない。職を失っても金銭という‘溜め’があれば、職を探していけるが、それがない人は・・・。

 

  • 日本には貧困ラインと呼ばれる明確なものがない(一方アメリカでは政府がこれを定めている)。なぜなら貧困の存在を政府は認めていないからだ。日本における絶対的貧困の指標はただ生活保護基準を下回った基準で生活している状態かどうかである。なお、生活保護基準は憲法25条の生存権に基づく、生活保護法に基づいて作られた基準である。
  • 生活保護の補足率(必要とする人に支給されている割合)が2割程度なのに、生活保護基準のみで日本の貧困を考えるのは不適当ではないか。さらに生活保護基準の引き下げが、貧困基準やそれに準ずる層のための制度の利用基準の引き下げにつながることにもなる(低所得者層の制度へのアクセスがいっそう難しくなる)。基準引き下げはナショナル・ミニマムの引き下げでもあるのだ。

 

  • 貧困問題に潜んでいるのは、自助努力の欠如ではなく自助努力の過剰である。現に貧困について相談してくる人はほとんどが経済的にギリギリまで追い詰められている。
結論

10年前の貧困の実態を知るリソースとしてはなかなか良かったと思います。100点満点で言うなら85点はつけられるでしょうか。

実際の貧困の例をここで逐一あげていくわけにはいかないので、貧困の深刻さや貧困問題への一部団体による取り組みについて、具体的に知りたいのであれば、一読をお勧めします。

 

それでは今日はこの辺で。

 

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