おりじゅのブログ

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レベッカ ソルニット 『災害ユートピア』を読んで(その2)

今日は3週間ほど前に書いたものの続きです。

hanoian.hatenablog.com

 

今日読み終えた本は『災害ユートピア』(亜紀書房)という本。

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その1の画像の使い回しですが・・・

読破に無駄に時間がかかったような気もしますが、それは置いておいて残りのチャプターについて書いていこうかと思います。

 

感想:

第3章はメキシコ地震に関する市民からの復興について書いていました。当時のメキシコシティは手抜き工事が多く起こっており、公共施設を初めとする都市部の建物は地震により極めて多くの被害を受けました。そのことから地震直後、メキシコ市民は復興は自分たちが主導して行うべきであると考えたのです。

実際メキシコ政府の災害対応は肯定的に評価できるものではありませんでした。政府は海外からの救助支援チームの受け入れにも後ろ向きで、また海外からの支援金や支援物資は政府関係の家族たちに優先的に横流しされました。さらには、彼らは震災に乗じ、元々は貧困層がすんでいた地域を再開発の名の下に、土地を奪い取ろうとしたのです。

土地の強制収用は、市民グループ貧困層の人々と団結して彼らに抵抗したおかげで、免れました。その後も、市民グループが中心となって政府に対して抵抗運動を続けた結果、現政権は倒され、新たに市民に味方するリーダーが誕生しました。

 

第4章は2001年にアメリカ、ニューヨークで起こった911のテロについてでした。この章では主に、テロ直後の現場の一般市民の対応が、行政の側の対応を上回った事例を示していました。行政の緊急時の指令を行うところがテロのターゲットになったビルにあったことも影響してはいますが、判断の遅れにより、救うことができた現場に向かった消防隊員の多くの命を失わせることとなりました。

このときの報道にも問題点がありました。テロ直後の復興には男性、女性を問わずに関わったのですが、ヒーロー的な扱いをされていたのは全て男性側でした。テレビや新聞が映し出す映像は、あたかもアクション映画のヒロインが無力でただ助けを乞うばかりの女性を救い出す、そんなステレオタイプの映像だったのです。

 

第5章はニューオリンズにおける、2005年のハリケーンカトリーナの災害についてでした。ニューオリンズという地域は黒人やアジア系の移民が多く、災害後の対応においては権力者やメディア、白人の高所得層から大きな偏見のまなざしが向けられていました。

彼らは被害者であったにもかかわらず、危険人物であると報道され、当事者以外からはそう受け止められていました。彼らに向けた外部からの食糧支援は当該地域が危険であるとして止められ、彼らは営業停止になった店から食料を調達せざるを得ませんでした。しかしながら、彼らが人命を救助するために行う食料品の調達は、略奪行為と見なされ、中には射殺された者もいました。さらに、彼らの避難場所は無法地帯で数百もの遺体が転がっているというデマも流されていました。(もちろん噂を噂のまま流したメディアに問題はあります。)

デマを受けて、白人の中でも差別主義的な思想を持つ人々は自警団()を結成し、隣町へと歩いて避難する人々を撃ち殺していきました。無差別殺人の存在を明らかにするわけにも行きませんから、カトリーナにおける数百枚の検死報告書は、ほとんどが隠蔽されるか、廃棄されていました。このように、災害に対する被害者の偏見は、被害者に対してより一層の被害をもたらすことになってしまったのです。

 

結論:

基本的には各章を通して似たような内容が記述されています。即席で形成されたコミュニティが自治体や政府の災害発生直後の対応を上回るといった内容、そしてメディアや権力者側の災害後の人々に対する強い懸念といった内容です。

 

最近、日本でも災害が多発し、復興が鍵となっています。このような本を読むことで政府主導のトップダウ方式以外の、オルタナティブな復興のあり方を知ってみる事ができると思います(日本の場合、過疎化がこの本で言うユートピアの形成の最大の壁になるとは思いますが)。興味があれば読んでみてください。

 

それでは。

 

翌日の投稿:

hanoian.hatenablog.com

 

昨日の投稿: 

hanoian.hatenablog.com