中西正司 & 上野千鶴子著『当事者主権』を読んで
今日は家に引きこもっていたので、書くような内容が限られてしまいました。
ということで昨日、一昨日に引き続き、読書の書評をしようと思います。
読んだのは『当事者主権』(岩波新書)という本。
そういえば、この本の作者である上野千鶴子さんは社会学におけるエビデンス云々についてツイッターで少々物議を醸していていたこともありましたね。
togetter.com(リンクを追記@6/21)
念のためアマゾンのリンクも貼っておきますね。
この本の主題を一素人なりにいうならば、当事者の専門家からの自立でしょうか。
この本ではその当事者の例として障害者が主な例としてあがっていました。
もう一人の共同執筆者の方が障害を持たれていたからというのもありますが、やはり障害者の方々が何よりも一番自分の考えを尊重されないからこそ、この例が掲げらているのでしょう。特に精神的・知的に障害のある方の場合、自分のことを自分で判断できないと(家族含め)周囲の人間から判断される傾向にありますからね。自分の望まない治療やサービス、特定施設への入所など、自分が一番その必要性があるかどうかををわかっているところでしょうに・・・
その意味で、この本のいう当事者が必要と感じるところだけ支援によるサポートを受け、それ以外を自助で克服して他の人と同じ環境で同じ生活レベルを実現するという主張は僕なりにも少数派・弱者に対する非当事者の支援が今後どうあるべきかについて考えさせられるところではありました。
とはいえ、この本の全てが素晴らしいかというとそうでもありません。箇条書きに悪い点を示すと、
- 当事者に対するメッセージ性、問題意識を投げかける点に重点が置かれているため、本の中の世界を知らない僕のような非当事者の人にはあまり親近感がわきにくいといえる点。
- 前例がなく一筋縄ではいかないと考えられる当事者の自己決定による支援を進めていくという運動に際し、失敗やハードルとなった話がほとんど書かれていなかった点。言ってしまえば共産圏のプロパガンダのような勝利や向上を掲げるに徹してしまったと言わざるを得ない。問題の深刻さは現状の打開のしにくさを示すことでこそ表現できるのではないだろうか。
- 内容の話ではないが、(どちらの筆者かは不明だが)主語がなんであるかが割と曖昧になっていて、誰/何が、どうすべき/どうであるかがつかみにくい。
あまり否定的には書きたくないですが、これらの点だけは読んでもらう前に少なくとも僕から言っておきたいところです。
結論:弱者とされる人々への支援やパターナリズムに興味があるのなら是非読むべき。
100点満点で言うなら60点というところでしょうか。国による障害者や介護支援制度の欠点、弱者と呼ばれる人々が実際どのような状況に置かれていたのかを知りたいのであれば読むことをおすすめします。
明日からは大学の授業が始まります。何か新たな発見が大学であることを期待しつつ今日のブログはこの辺にしておきます。
それでは。
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